ローカル路線バスの旅をテレビでやっていたので見ていたら
和歌山と三重の県境の、新宮川を渡る橋に見覚えがあった
たしか数年前に同じ橋をバスで通ったことがあった

赤い鉄の橋で、それに伴って思い出されたのは
そこから少し手前、三重県側にセメントの工場かなにかがあって
その外壁に、工場で生産されたのであろう様々なデザインの壁穴ブロックを
あしらったブロック塀が設置されていたことだ

おれは壁穴の写真を撮って集めるのがささやかな趣味で
新種を見つける度にうれしい気分で写真を撮るのだが
(収集した写真はページ上「photo」のリンクから見れます)
バスで通り過ぎる一瞬、壁一面に二十個はあろうかという様々な壁穴が
連なっているのを見た時は一瞬目を疑った

それはさながら壁穴の標本のようで
一箇所に多種の壁穴が集合することは普通ありませんから
そうか製造工場ならこういう荒業も可能だなんて思っているうち
写真を撮る間もなく通りすぎてしまい、なんだか幻でも見たかのような
気分になったのだった


そのことを、はっと思い出し
もちろん番組にはその工場は映りはしなかったのだが
急に気になりだし、Googleマップのストリートビューを開いた
一帯のルートはストリートビュー対応になっていたので、くまなく見ていくと
紛れも無く当時見た工場を発見した

そこは新宮川河口の三重側にある「日比野生コン工場」という施設だった
多種に見えた壁穴はじつは五種類ほどの壁穴をミックスして配置したもので
(それでも充分めずらしいブロック塀だが)どれも既に見たことのある形のものばかりだった
思いがけずミステリアスな記憶を思い出し、正体を暴いてしまったので
唐突な達成感と、軽い寂しさがある

そしてあらためてインターネットの情報の守備範囲はすごいなと思う




唐突に思ったことだが、誰かと偶然再会するには日本は広すぎるな
電車で遠くまで出かけたりなんだりすると、移動して通り越した無数の駅に
知っている誰かがいても不思議ではない
それでも移動して通り越した駅なんて、日本にあるさらに膨大な数の駅の
ほんのわずかな分だけだ

よくわからん動機で適当にぶらぶらするのも面白い