自分の部屋をぐるっと見渡したら時計が五つあった
アナログの針の時計が四つと、デジタルのが一つ

こんなにあってもなあ
なぜこんなに増えたんだったろうか
由来を思い出してみると、針のやつは皆祖父母の家で貰ったやつだ



ひとつは、部屋の壁にかかっているアナログ時計
これは、部屋に壁掛けの時計が必要だなと思っていたところ
祖父母の家の、かつて叔母が使っていて、今は空いている部屋に
かかっていた時計を貰えることになったのだった
黄緑色の、ファンシーな見た目のやつだ


もうひとつは、目覚まし時計で
これは電池が切れたままずっと使っていなかったようで、電池が液漏れを起こして
ぐずぐずになったまま広間の隅の棚の上に置かれていて、それを貰った

電池を受ける部分が錆びて使い物にならなかったので
市販の電池ボックスを加工して取り付け、修理したところ
ムーブメントは壊れていなかったようで、正常に動き出した
おれは目覚まし時計は使わないが、せっかくなので動かしている
どんな音が鳴るのかは使ってないためわからない
鳴るのかな


もうひとつは、飾り要素の高い置き時計
流し台かなんかの下を片付けたら何故か出てきたとかで
捨てるというから貰った
これは電池を入れたら普通に動いた
透明の三角形のパネルに丸い時計が配置された奇妙なデザインで
透明のアクリルを使った現代的なトロフィーかなんかにも見える


最後のひとつは、普通の壁掛けの時計だが
古いトランジスタ時計で、電池を入れてもぴくりとも動かず
ムーブメントをクオーツのに入れ替えるのが修理としては
手っ取り早いのかな、と思いつつも時計いっぱいあるから
必要に迫られず、部屋のすみっこのほうの壁にかけたままほったらかしてある
木で囲われた白い文字盤の、部屋の時計の中では最もクラシカルで重厚なやつだ
これもきっと祖父母宅で壊れ、捨てるにもしのびない重厚さから
なんとなく保管されてあったのだろうな


さて、そのうちの二番目と三番目の時計の電池が切れていたのだったが
ファンシーな壁掛けと、デジタルの時計はずっと正常に動いていたし
携帯電話や腕時計、パソコンの画面の隅にも時計はあるし
ひとつふたつ動いていなくても、生活にはまったく支障がなかったので
そのままにしてあったが、今日なぜか思い立って電池を入れ替えた
そんなわけで、部屋の四つの時計がもりもり動いている


夜、布団に入り、部屋の電気を消して目を閉じると
三つのアナログ時計の秒針の動く音が聞こえる
それぞれ微妙にずれているので
「チャチャチャッ、チャチャチャッ、」というかんじに聞こえることになる

しばらく針の音は一つで
「チャッ、チャッ、チャッ」の状態で眠りについていたので
今日からまたチャチャチャッを聞きながら寝るのか、にぎやかになるなと思っていたが
今日入れた時計の秒針の動きが偶然にも完全に一致したため
「チャチャッ、チャチャッ、」という音になっているみたいだ

それで、遅れて聞こえてくるほうの「チャッ」がハモっている
ちなみに一つは母方、もう一つは父方の祖父母の家でもらったやつだ
場所も年代も違うところで鳴っていたはずの音がいま集合してる

そんなことを考えていたら、今夜はなおのこと耳についてしまうだろうな
スムーズに眠ることができるだろうか