寝ながら本を読んでいたら、遠くで妙な音がした
金属の重いロッカーかなにかを引きずって移動させたような
あるいは怒ったゾウの鳴き声のような
もしくはブリキ製のチープなラッパを乱暴に吹いたような音かもしれない
擬音語で表すのは難しいが「ペアー」と「ギャー」を足したような音です
それが、窓の外の道を隔てた建物内、くらいの距離から聞こえてきたような
そんなほんのかすかな音だったが
その数秒後、自分の鼻から出た音だと気づいた
鼻の絶妙な具合で、呼吸が変に共鳴して鳴ったものだった
丁寧に鼻で呼吸してみると、そのかすかな音がした
軽く鼻をすすってみると具合が崩れ、もう再現できなくなってしまった
文字通り目と鼻の先で鳴った音が、はるか遠くの音に感じられたのは興味深い
完璧に、大きな音が距離のために小さくなったような音質だった
大きな音が距離で小さく聞こえるのと、小さい音を間近で聞くのとは
その質感は違うものだろうか
遠くの大音響か、耳元のささやきか、それは演奏方法や発声方法から
判別しているということもあるのだろうが
仮にその音質を揃えたとき、違いに気づけるとしたらそれはなにか
距離を伝わる間に失われるあるいは付加される音の特徴が
あるのだろうか。
だとするとさっき鼻から出た音は偶然その特徴を兼ね備えていた