約束があったので出かけた

昼過ぎの電車に乗るとき、昼ご飯を食べそびれそうだったので
駅前のコンビニでおにぎりを買ったのだが食べるタイミングを逃し
待ち合わせの駅で時間があったので、食べることにした

駅の隅のあたりで座っておにぎりを食べていると
「倍返しだ」
という声が改札のほうから聞こえてきた
二回くらい聞こえてきた。声の主は眼鏡をかけた中学生の男子で
どうやら独り言のようだった。
わりにはっきり聞こえる程度の小声で呟きながらこちらに向かってくる

そちらを見たら目があってしまった
一瞬妙な間があり、中学生は足早におれの目の前を通りすぎようと
したが、動揺したのか持っていた定期入れをおれの目の前でとり落とした
ピンク色の柄のパスモが入っているのが見えた
おれは「あ」と言ってしまった

中学生は落ちた定期入れをむしりとるように拾って鼻歌を歌いながら去った
なんとも言えない気分が残った
おれは残りのおにぎりを何となく急いで食べた
その一連の流れがなぜかスローモーションのように思い出される