幼少時に住んでいた町を見に行った
その土地を離れてからも時々行くことはあったが
この十年くらいは行く用もなかった。たまたま近くで時間があいたので
気まぐれで足をのばしてみることにしたのだった

知っている道にやってくると、変わったような変わっていないような
まだらに見える。町の部品を見るにつけ、この店は昔からあった、とか
これは記憶にないが恐らく引っ越してからすぐくらいに出来たのであろう
それなりに古びたものとか、ピカピカのものや。公園の遊具ひとつとっても
新設されたものもあるが思いの外自分が遊んだ記憶のある古いものも
塗り直されたりはしてるのだろうが残ってるものも多い
当時用途がわからなかったものも、意味が判って同じ姿でも意味を伴って
目に飛び込んでくるものもあり、はっとする
難しい字も読めるようになっているというのは大きい

友達が住んでいたアパートのひとつは跡形もなく取り壊されていた
おれが初めてエネルゲンを買った自販機も撤去されていた
空き地や畑だった土地は新しい住宅が建って景色が様変わりしていたが
おれが掘り起こしてズタズタになった駐車場の角のブロック部分は
まだズタズタなままだった

当時、通学路にあった駐車場の地面に番号がふってあって
1,2,3,5…というふうに、4が抜かして表記されていたのだが
文字はかすれかけていたがまだ健在で、4は飛ばされて表記されたままだった
幼少時に4が不吉な数字だとされていることをその駐車場で学んだ
それを思い出した



引っ越しすると決まったとき、子供のおれは景色を写真にとらなくてはと
思ったことをはっきりとおぼえてる
好きな町だったから、景色の写真をみてなつかしむに違いないと思った
殆ど撮れなかったが

道中、工事や建設をやっている箇所をいくつも見た
いまも景色がすこしずつ変化していて知っていた景色が知らないものになってる
記憶にある景色が重厚な時間軸のある一点だったのだということを考えて
厚みがあるのだなと思ったがそれが良い厚みなのかどうかはよくわからない