ベッドの下の空間には、普段使わない箱が押し込まれている
 
押し込まれているといったが、押し込んだのは自分だから
押し込んであるというほうが正しい
でも箱からすると「押し込まれてしまった」という感覚があるだろうなと
いう気がして、押し込まれているという表現を自然に選んでしまった

そういう感じで、押し込まれている


片付けでもするかと思って箱を出して開けてみると
小さいドライバーとスーパーボールが入ったプラ製の小物入れ
絵がかわいいから残してあった日めくりカレンダーの束
古いパンフレット
などが出てきて、押し込んだときの気持ちが蘇ってきた

そんななかに、レシートの山があった
紙製の箱にぎゅうぎゅうに入っていて、ぱらっと見ると
レシート特有の、なんかちょっと揮発した感じの匂いがたちのぼる
2008年頃のが見えたので、干支が一周するくらい前のやつだ
おもしろいかも、と思って整頓してみることにした
余ったスクラップブックがあったことを思い出したので
それに貼っていくことにした

箱の上から順に取っていき、上辺にのりをつけ、並べて貼っていく
本屋、ガソリンスタンド、コンビニ、ホームセンターなんかが多いかな 
いまと大してかわらないといえばかわらないけど
今はもう無い店、今は無いポイントカードのサービスなどなど
証拠物件として見過ごせない点が多々ある
 
レシートは感熱紙だから、経年で結構派手に劣化する
同じ箱に突っ込んであったものでも、けっこうばらつきがあって
並列に並べていくと、そのコントラストが楽しい
ピンクっぽく変色するものと黄色っぽく変色するタイプがあり
ピンクが圧倒的に多い。
その濃度も様々だ
地の色が変色するだけのものと、同時に文字が薄れゆくものとがある

見て何を買ったか思い出せるものも、思い出せないものもある
なんの店だかわからないようなものすらある
色や文字の濃淡がある
時間の経過と記憶の混濁が物理現象として紙に現れたようでおもしろい
 
 
ここにある情報をつなぎ合わせれば、当時の足取りを追うこともできる
追わないけど
何月何日何時何分にどこの店でいくらつかって何を買ったか
その気になればわかるのだ、ということがわかっているということに
安心感がある
自分では到底思い出せない自分の正確な情報が自分の脳の外に保管されてる
安心感のあることだ