T字路という言葉から光景を思い浮かべたとき
いつも頭に浮かぶT字路がある
 
乗用車がすれ違える程度の幅の道の両脇に戸建ての住宅があり
敷地と道路の境界には70センチくらいの高さのブロック塀
その上にアルミの白いフェンスがある

道の突き当りが、その道と同じか少し広い道で、信号がある
片側一車線道路の中では狭い部類に入る2車線道路で
突き当りの奥側は緑色の金網のフェンスが左右に広がっている
フェンスの奥は草地で傾斜になっており、奥の下に小川かなんかが流れているらしい
桜の木が生えていたと思うが、花の時期ではなかった 
金網の側の路側帯がガードレールで区切られていて、細い歩道になっている
 
車の助手席に乗っていて、この交差点の信号待ちをしている
薄汚れたフロントガラス越しの、光が拡散して少し緑がかった色合いが
鮮明に頭に浮かぶ

 
 
これがどこにあるT字路なのかは、まったく思い出せない
実在するのかもわからない 

なんとなく、埼玉か軽井沢のどこかなような記憶の感触があるが
具体的な心当たりはないし
小川は玉川上水のどっかの記憶も混じっているような気もするし
複数の場所の記憶が混線しているようにも思えてくる

いつだったか、T字路という言葉は正確には「丁字路」であるという
事実を知り、そうだったんだと驚いて知識を訂正したという時があった
件の光景は、「丁字路」という言葉からはなぜか想起されないのである
「T字路」という言葉にのみ紐づいている景色のようで
「ただしくは丁字路」という知識を得る以前の古い記憶なのかもしれない



こんな記憶の断片、ふと忘れてしまって永久に思い出さない可能性もあるし
逆になんかの拍子に正確な場所が判明するかもわからん
たまたま通るとか。
なんにせよ頭に浮かんでいるうちに記録しておくのに越したことはないから
日記に書いておこう